千葉地方裁判所 昭和49年(わ)1157号 判決 1975年5月30日
本籍
千葉県佐倉市臼井一〇一番地
住居
右同
会社役員
蕨進
昭和一七年一〇月一三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官子原英和出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月及び罰金一、二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
(罪となるべき事実)
被告人は、不動産売買および商品取引を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売買利益の一部を除外して仮名普通預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四六年分の実際所得額が二〇、四〇〇、〇九六円あつたのにかかわらず、昭和四七年三月一五日の申告期限までに、成田市成田八一二番地の一二所在の所轄成田税務署長に対し、所得税確定申告書を提出せず、もつて、同年分の正規の所得税額八、九三一、九〇〇円を免れ、
第二、昭和四七年分の実際所得金額が七五、一九七、五三七円あつたのにかかわらず、昭和四八年三月一五日、前記所轄成田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九、六四三、六二一円で、これに対する所得税額二、九四五、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額四四、一一五、二〇〇円と右申告書所得税額との差額四一、一七〇、一〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
第一の事実につき
一、大蔵事務官作成の昭和四六年分脱税額計算書、脱税額計算書説明資料(昭和四五年分、同四六年分二冊)、昭和四六年分所得税の税額計算書、調査元帳(昭和四六年分)
一、秋山常治の検察官に対する供述調書
一、押収してある委託者別先物取引勘定元帳・委託者別委託証拠金現在高帳一冊(昭和五〇年押第九七号の19)
第二の事実につき
一、大蔵事務官作成の昭和四七年分脱税額計算書、脱税額計算説明資料(昭和四七年分二冊)、昭和四七年分所得税の税額計算書、調査元帳(昭和四七年分)
一、押収してある申告書類綴一冊(前同号の18)、委託者別先物取引勘定元帳・委託者別委託証拠金現在高帳一冊(同号の20)、所得税確定申告書一通(同号の26)
全部の事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一六通及び検察官に対する供述調書二通
一、大蔵事務官作成の調査元帳(貸借勘定)
一、山崎和美の大蔵事務官に対する質問てん末書及び検察官に対する供述調書
一、中川隆嗣の大蔵事務官に対する質問てん末書及び検察官に対する供述調書
一、押収してある委託者別先物取引勘定元帳一冊(前同号の21)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はそれぞれ所得税法二三八条一項に該当するので、情状により右各罪につきいずれも同条二項を適用したうえ、懲役刑と罰金刑を併科することとし、判示各所為は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役八月及び罰金一、二〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金二〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 新谷一信)